みなさまこんばんは、あのつぎはイです。それでは今日も更新やっていきます。
今日の記事は抄読会のネタを集める時に基本となるポイント3つと、応用ポイント2つを説明していきます。
抄読会というのは、医者が早朝やお昼時、もしくは症例検討会とかの間に行う、論文の紹介を行う行事と思ってください。大学病院の多くや、市中の病院でも行われている部署が多いと思います。抄読会と言ったりジャーナルクラブ(journal club)とか、論文読み合わせとかも言ったりしますね。
そんな抄読会ですが、
「どんな論文(ネタ)を使ったらいいかわからねー」
という人が多いんですよね。そこで今回は次のような人たちをターゲットにした記事となります。
- 初期研修医や内科専攻医で各科ローテート中の先生たち
- 抄読会で論文を定期的に読んでネタ集めをしなければならない若手医師
そしてそんな人たちが
- いったいどんな論文(ネタ)を用意したらいいか分からない
- そもそも時間が無いから選んでいる時間が無い
と困っている時に、この記事を読むことで
- 上級医の先生たちが興味を持ってくれる
- 探すときの検索が短時間で済む
こんな抄読会になるようなネタ集めの仕方を説明していこうと思います。
ちなみに、実際の論文の読み方は下の記事からどうぞ
「医学英語論文を読む時のお手軽ポイント PI(E)COに目を向けてみよう」
基本となる3つのポイント
まず、論文を探すときの5つの基本ポイントを説明します。
まず結論から、ドーン!
- ローテート中や救急外来で当直中に出会った疾患に関する論文を探す
- 出来るだけ1年以内に発表された論文にする
- 有名な5大ジャーナルか、各科で有名なジャーナルに投稿された論文から選ぶ
このあたりが、興味も持ってくれるし手早く検索もできるポイントですね。一個ずつ見ていきます。
ローテート中や救急外来で当直中に出会った疾患に関する論文を探す
これはよく抄読会のネタ探しで言われるポイントですね。やっぱり自分が関わったことをテーマにすると、自分の勉強も捗るし、上級医の先生たちも、ローテート(以下ローテ)を頑張っていたのが直ぐに分かるというのが理由ですね。
ただ、これ注意が必要でして、ローテ中に出会った疾患と言っても、初期研修医の先生たちって、だいたい1か月くらいで各科のローテが終わっちゃうので、最初の1-2週くらいで出会った疾患ならいいですが、最後の1週間で出会った珍しい疾患があっても、それを元に抄読会を乗り切るには論文探すのと論文読むのを超ハイスピードで終えなければならないので、流石に無理な気がします。勿論再ローテをするとき(初期研修2年目の自由ローテとか、専攻医プログラム中とか)のネタとして疾患を自分の中にストックしておくというのはアリですよ。
そこで自分が推奨するのは、特に初期研修医向けですが、自分が救急外来で当直中に出会った疾患をネタにして論文を探すという方法です。これなら、ローテが始まる前にネタを決めることができて、探すのに時間を取れるというメリットがあります。さらにそれがローテで印象に残った症例なら、例えば以降の自主的な勉強会でも症例勉強会とかで取り扱う時に論文を探す手間も省けるので、一度試してみるといいですよ。
出来るだけ1年以内に発表された論文にする
これは2つの理由からです。
1番目は、それより前の論文だったりすると、結構上級医の先生たちは自分で論文を読んじゃったりしていたり、もしくは新しい論文が出ていて考え方が変わっていたりして、少し興味を持ってもらうのにリスクが生じるからです。
もう一つは、そもそも自分がローテする前にローテした同級生や先輩医師たちが、すでに抄読会で扱っている可能性が高く、抄読会で2回も同じ論文を紹介すると、自分自身もあまり勉強にならないし、上級医の先生たちも全く興味を持ってくれません。なので、出来るだけ投稿後1年以内の論文にするようにしましょう。
有名な5大ジャーナルか、各科で有名なジャーナルに投稿された論文から選ぶ
これは検索する雑誌(ジャーナル)を絞る意味でポイントに挙げました。5大ジャーナルというのは以下の5つの雑誌です。
- NEJM (New England Journal of Medicine)
- The Lancet
- JAMA (Journal of the American Medical Association)
- BMJ (British Medical Journal)
- Annals of Internal Medicine
この辺りは、いわゆるインパクトファクターが高く、大体個々の雑誌の登場する論文はその年代において各専門科において旬なネタが扱われております。
そして、これらに加えて、各科のなかで有名な雑誌をいくつか候補に入れて(循環器内科ならJACCとか)、そこから1年以内に発表された各科に合わせた論文を探せば、大体何かしらネタを探すことはできます。
特に、NEJMは要約だけなら日本語のページもありますしね(ちゃんと英語原著で呼んでくださいね。)
ということで、基本ポイントをまとめると
「ここ1年以内に発表された、有名雑誌に投稿されているローテ中の専門科の論文」
となります。
応用した2つのポイント
ここからは、先ほどの基本ポイントから少し外れた、でも大切な応用ポイントを2つ紹介します。
まず結論から、ドーン
- 世界の潮流に合わせた論文を探す
- 自分の興味・関心のある疾患をベースに探す
少し説明が必要なものなので、ここに見ていきます。
世界の潮流に合わせた論文を探す
これは、先ほどの5大ジャーナルを紹介した時も説明しましたが、各専門科には、時代に合わせて旬なネタが存在します。注目されている疾患、新しく登場した薬や手術法や機械、治療法同時の比較検討…etc そこで世界の潮流に合わせてネタを探すというのがこのポイントとなります。
ここに注意というか説明が必要なのは、世界の潮流をローテ中の科に合わせてカスタマイズするのもアリという物です。
例えば、2020-2022年現在、いまだ関心の尽きないコロナ感染症(COVID-19)について、感染症だけの世界かと言えば、例えば循環器内科なら心筋炎という合併症が注目を集めています。そこで、コロナ+心筋炎で論文を探して発表すれば、立派な世界の潮流に合わせた論文探しという物になり、上級医の先生たちの興味を引くことができます。他にもコロナ感染症は後遺症も注目されていますから、後遺症の中身を調べてみて、それが今のローテ科に関わるものなら紹介する、というのも十分アリな抄読会です。
こんな感じで、世界の潮流を見ながら、ローテ中の科にあった論文を探すというのが、この応用ポイントとなります。
自分の興味・関心のある疾患をベースに探す
こちらも基本ポイントの1番目に紹介したものを応用しています。具体的な方法としては2つほど考えられます。
例えば、当直やローテ中ではなく、大学の実習時代とかに出会った症例で印象の残っている疾患とかがあれば、それを参考に論文を探すという物です。これの良い所は、「大学は市中病院では経験できない稀な疾患しかいない」という、研修病院を探すときに考えなければならないテーマを逆手にとって、市中病院で頑張っている先生たちに少しでも普段目にしない疾患に関する情報を論文で紹介するっていう、なかなか上級医の先生たちにとっても勉強になるところですね。
注意点は、実習当時に勉強した論文とかだと、基本ポイントの「1年以内に発表された」から外れる可能性が高いので、出来れば研修中とかに改めて論文を探してもらえると嬉しいですね。
もう一つは、いくつか論文を選んでつまみ食いをして、それをミニレビューみたいに紹介するっていうものです。たとえば、コロナを例にとれば、先ほどの後遺症について、各国ごとの違いとか、年齢ごとの違いとかを、いくつか論文を探して紹介してみるというものですね。あとは、循環器領域なら、心房細動に対するアブレーションは2021年に更新したガイドラインなどで推奨度が上がってきておりますが、一方でその有効性はHFrEF(収縮の低下した心不全)とHFpEF(収縮の保たれて心不全)、無症候性のそれぞれでどうなのか、論文をいくつか読んで紹介するって感じです。
ただこの方法は、抄読会を担当する若手医師やローテーター(ローテする研修医の事)の負担がかなり重いので、行うなら注意が必要です。よほど頑張ると決めない限りは、やらない方が無難です。
ちなみに、論文を探す方法は…
こちらは、上のポイントを押さえながら、例えばpubmedなどで検索したり、直接5大ジャーナルのホームページにいってみて検索してみるという方法でいいです。pubmedの使い方とかは他の色々な人が紹介していますし、今後自分もどこかで紹介してみようと思っています。
まとめ
いかがだったでしょうか。今日は 今日の記事は抄読会のネタを集める時に基本となるポイント3つと、応用ポイント2つを説明してきました。
改めて、今回の記事で少しでも
- 上級医の先生たちが興味を持ってくれる
- 探すときの検索が短時間で済む
こんな抄読会を出来るようになってくれればうれしいです。
それでは今日はこの辺で、have a nice day and see you next day!