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専門医レポートの考察に苦しむあなたへ 自分が考えるネタの見つけ方

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 みなさまこんばんは、あのつぎはイです。今日も更新やっていきます。今回は専門医や研修医卒業のためなどに必要とされる「レポート」、その中でも考察について話をしたいと思います。

 みなさん、レポート作成は得意ですか?

 おそらくこう質問すると、100人中380人くらいが「レポートなんて苦手、試験も苦手、出席したら合格にしてくれれば(単位くれれば)いいのに」と思っているかもしれません。おそらくその苦手な理由って、多くが「考察」をどう書いたらいいかわからないっていうものではないでしょうか。そこで今回は、初期研修医を終了するのに必要な研修レポートや、内科認定医を取得するために必要なレポートを時間をかけずにサックリ済ませて、かつ提出先からは「適切な考察が行われています」と評価をいただいた自分が、考察を書くコツなんかを話しできたらいいなと思っています。

 それではさっそく話していきましょう

1. そもそも考察とは

 考察とは、「物事を明らかにするために、よく調べて考えをめぐらすこと」(goo辞書より)とされています。多くの辞書でこのような説明がされておりますが、要はレポートを提出する相手に向けて「自分は今回○○について、特に丁寧に調べましたので、その調べた内容を紹介します」というものです。「楽しかった」や「面白かった」などの個人の印象=「感想」とは趣が異なることに注意してください。

 さて、実はまず今回話をするターゲットを決めなければなりません。今回のターゲットはあくまで専門医試験や研修医終了に必要な症例レポート(症例報告では無い)を書こうとしている人にします。例えば症例報告等のように学会専門誌などに投稿するわけではなく、あくまで研修終了に必要だから、もしくは専門医取得のために提出が義務付けられているから記載するという人たちがターゲットです。ここまで話しただけでお気づきかもしれませんが、考察するといっても、そこに何を含めなければならないかが場面や状況、書き手の立ち位置や提出先によって結構違ってきます。先ほどのように症例報告として考察をするのであれば、例えば日本では稀な疾患だからとか、Aという疾患にBという疾患が合併するのはまれだからとか、等の希少性を説明したり、もしくは疾患を見つけるうえで新しい方法を発見した等の新規性とその妥当性を説明したり、その辺りを考察しなければなりません。しかし研修レポートや専門医用レポートであれば、そんな小難しい内容は必要なく、あくまで「自分で○○をよく調べたので発表するよ(新しいことはないけど許してね)」でも十分考察としては体裁が整った素晴らしい文章になっているのです。このような、今回の考察で求められているものをしっかり把握しないと、考察はうまく書けないと思っています。

 そうすると、このような質問が出てくると思います、「必要な考察が状況によって異なるのは分かったけど、じゃあ実際何(どんな場所)を調べればいいのさー」。そこで、次は何を調べればいいかを説明していこうと思います。

2. 何を調べればいいのか

 結論から言います。「各疾患のガイドライン」や「UpToDate」の二つです。だいたいこのうちのどちらかを調べれば(両方調べる必要もありません)、ほとんど調べる作業は完了します。もう一つの「何」である、調べる際のネタの探し方はもう少し後に説明します。

1. 各疾患のガイドライン

 注意点ですが、今回は症例レポートの考察を書くための記事であり、医療行為をするうえで病気を先行することを薦める記事ではありませんので注意してください。

 今回レポートを作成しようと思った患者さん、その患者さんで治療した、もしくは取り扱った疾患のうち、ガイドラインがあるものなら、ガイドラインを使用しましょう。最近は学会によってはガイドラインを無料で閲覧させてくれるところもあるので、これは本当におすすめです。なお、自分がレポートを書く際ガイドラインを利用しましたが、インターネットで閲覧できなくても図書館に行くと置いてあったりするので探してみてください。できれば最新年のガイドラインがいいです。

 例えば、日本循環器学会のホームページ上では、このように各領域ごとに区分けされたガイドラインがすべて無料で閲覧できます。

 ガイドラインを見たことある人ならわかると思いますが、自分としてはガイドラインて膨大な論文をたくさん読んで調べて出来上がっている考察の発展形みたいに思うんですよね。学生時代は見向きもしませんでしたが、最後にびっしり引用文献のリストがあるわけす。ところが、この引用文献リストこそ、今回のレポートで非常に有用になるところなんです!後半説明するネタに合わせてガイドラインを読んで、そしてその該当項目に付随している(よく文章の右上とかにある105)みたいなやつ:この番号を頼りに)引用文献をpubmedとかで検索し、自分のネタに合致するものであればそのまま引用文献として使用すれば、わざわざ一から英語論文を調べつくさなくてもいいという、とってもお得なやり方だと思うんです!もちろん、孫引き(原著論文を読まず、ガイドラインなどの二次文献からもとの原著論文を引用してしまう事)はだめですよ、最低限pubmedでabstract(要約)くらいは読んでくださいね。

2. UpToDate

 皆さんご存じのUpToDate(こちらから)でも同じことができます。こちらもいろいろな文献を調べた結果、さまざまな疾患や病態などの情報が閲覧することができます。ただ、こちらの場合最初から英語を見ながら探す必要がある(一応日本語検索はできますが、あまり信用ならない気が)ので、ちょっと大変かなと思います。個人的にはガイドラインが無い時にUpToDateを利用するって感じですかね。

3. ネタの探し方

 さて、調べる方法まではお伝えしましたが、「そもそも考察に何(ネタ)を書いて良いか分からないんじゃ-!」と言われそうですね。そのネタの探し方もやっていこうと思います。

 ここも注意ですが、あくまでレポートを書くための作業です。「病気ではなく患者を診る、もっと言えば人を診る」大事にしたいですね。それが終わってから、病気や疾患は考察しましょう。

 ネタについては大きく分けて3つに分かれます。しかも難しくありません。ガイドラインを参照してください。そもそも疾患とかって典型的には発症(=有症状でも無症状でも)→診断→治療→予後(その後の経過の事です、多くは死亡の有無などを見ています)の順で進み、ガイドラインもその順で説明されていることが多いと思います。なので、必然我々もその過程の中で調べて考察に書けばいいのです。

1. 発症=疾患疫学的な事 もしくは予後

 まず疾患そのものについて。たとえば日本では発症が稀な病気であるとか、もしくは海外と比べて発祥の多い疾患(HTLV-1感染などは海外より日本、とりわけ九州ー沖縄に多いとされています:こちら参照)とか、頻度の事が一つネタになりえます。男女比(一般的に膠原病は男性より女性に多い)とかもそうですね。あとは自然予後なんかもネタになります。年間発症数に比べて死亡者が多い(致死率が高い)というのも立派な疫学的調査を調べた考察です。「○○という疾患は致死率が高と言われ(ここで引用文献を紹介する)、見逃してはならない疾患と考える」なんて書けば自分の意見もきちんと加えられており100点満点!です。こんな感じで、疫学的なことは結構ガイドラインにも書いてあることが多いので、ネタの候補にしてみるのはありですね。

2. 診断に至る過程 重症度という話題もアリ

 こちらもネタとして書きやすいです。特にこのネタは自分の意見を取り入れやすいかなと思います。というのも、疾患を診断するにあたり、まず病歴や身体所見から疾患のあたりをつける(これを鑑別診断する、鑑別を絞っていくと言ったりします)んですが、レポートにするくらいなので疾患はすでに分かっています。なので、当時をカルテで振り返り、ガイドラインに書いてあるような有名な所見があったか、なかったを調べ、この差異を考えていくというものです。同じことが検査(採血検査やレントゲン、CTやMRIなどが有名ですね)でもいえるので、結構ネタを拾うのに重宝します。また、疾患が確定(確定診断と言います)したとして、疾患によって現場では重症度や活動度を調べることもあります。この重症度や活動度は、治療方法を決めるうえで有用な評価方法となりますが、そもそも「なぜその重症度の分類で治療法を決めていいのか」その根拠論文を探すのに役立つのが…そうです「ガイドライン」です。たいていは重症度や活動度を現場で評価すべき有用性の根拠となる文献がガイドラインに載っていることが多いので、「重症度で治療法を選択した方が良いという事が言われており(引用文献提示)、この患者では重症度は軽度だったのでその文献に従い内科的治療方針とした。実際患者は回復し退院できた。」とか書くと、かっこよくないですか。ネタがまた一つ、作れましたね。

3. 治療方法の選択

 ここもネタにしやすいです。当然です、今やEBM(Evidence-Based-Medicine)の時代です。治療法には必ず根拠となる論文があるはずなんです(慣習的にいいと思っていやっていることもたくさんありますけどね)。じゃあ、自分が診療していた当時に治療で用いた手法は本当に根拠論文があるのか、どう調べたらわかるのか…、そうです「ガイドライン」ですね。逆に言うとガイドラインに載っていない治療法を選択した場合も考察のチャンスです。たいていは上の先生が根拠となる論文を知っていたりするので積極的に聞いてみてください。そうすることでより積極的に患者様を治療する方法を取得することにもつながります。特に手術が必要な症例なんかはここを考察ネタにすべきかなと思います。ガイドラインで手術は勧められているのか、もし勧められているのであればどのような状態の患者様には適応していいのか、多くはガイドラインに載っていますので参照してみてください。

4. そもそもネタっていくつ書けばいいの

 最後は異なる側面の問題です。考察についてネタをどの場所から探すか、どのような内容をネタにするか考えてきましたが、「ガイドライン通りにネタを漁ると100でも200でも出てくるけど、いったい何個書けばいいのさー」という問題です。これは提出する先からの指定があればそれに従ってください。指定が無い場合は、レポートの枚数や文字数で考えてみるのが妥当かなと思います。個人的にはA4で1枚なら1-2個のネタ、A4で2枚なら3-4個は最低でもネタを出した方が良いですが、10個も出すと他の記載欄(病歴や身体所見、検査所見など)を圧迫してしまうので、多くても6-7個くらいかなーと思います。

まとめ

 いかがだったでしょうか。自分の周りにも考察を書くのに苦労している人が多いですが、多分「誰からも褒められて他の人にはないオリジナリティのある素晴らしい症例報告」を書こうとしているからかなと思います。もちろんそれが理想ですが、そもそも今からその素晴らしい専門医になるためにレポートを出して試験を受けるわけで、だれが見ても100点満点の症例報告が書けるなら制度自体が矛盾しています。専門医になるために、きちんと今の日本の医療をルールを守って行っている、その姿が分かる考察なら、それが100点なのではないでしょうか。そんな思いで、私も今年専門医試験を受けるために、レポート作成、頑張ります!