みなさまこんばんは、あのつぎはイです。連続更新が途絶えてしまいましたが、今日も日中の研究や外来が忙しく、今日もさらっと更新にします。
ということで、今回は医学論文、特に原著論文の類を読むときのポイントを説明しようと思います。
医学論文、抄読会やレポート作成、最新治療の情報などを収集するために利用する一次情報の代表です。ただ、ほとんどが英語で書かれているため、読むのに時間がかかるという方も多いと思います。日常診療で忙しい中で何ページも英語を読まなければならないというのは苦境ですよね。
そこで、よく提唱されているのが、原著論文のように介入研究や観察研究を読む時はPI(E)COに注目して読もうとされています。これは、現在よく言われるEBM(Evidence-based Medicine)を行う上で必要な知識になるからです。そこで今回は、PI(E)COの中身と注意すべきポイントをざっと説明しようと思います。症例レポートを作成する(考察のtipsを紹介した記事がこちら)時に論文を読まないといけない時や、抄読会で論文を紹介する時とかでも使える方法なので、読んでもらえると嬉しいです。ちなみに、以降はPI(E)COはPICOと書いていきます。
1. そもそもPICOとは
PICOというのは、P(Patient:患者)、I(Intervention:介入内容)、C(Comparison:対照)、O(Outcome:結果)の頭文字となります。
抄読会で論文を紹介する際、臨床論文を扱う時に多いのが、論文のFigureだけ説明して終わる人がいます。抄読会って病院とかでは15-20分くらいしか時間がとられていないため、確かにFigure位しか紹介できないのですが、EBMを意識するのならどちらかというとPICOを軸として、それを紹介するためにFigureを利用する、というのが大事かなと思います。
PICOは多くの場合、P,I,CはMethod(方法、Protocolと言われることも)に、OはMethodとProtocolに書いてあることが多いです。Methodって例えば統計手法が書いてあったりして読む気が失せるのは分かりますが、最低でもPICOに関わるところくらいは読んでほしいなーと思います。
では、4つのポイントそれぞれを説明してみようと思います。
2. Patient 患者
Pで紹介すべきは、どんな患者が今回のターゲットになっているかという事です。
そもそも、今回取り上げる論文が、どんな疾患、もしくは病態をターゲットにしているかは考える必要があるので、必ずこれはPで説明しましょう。そして、その中でいったいどんな患者層が選ばれているのか確認するのが手順となります。たいていはMethodに組み込み基準と除外基準が書いてあって、最初のFigureとかTableに患者の属性が書かれているので、大事な所だけざっと拾えれば大丈夫です。例えば、年齢や性別、既往歴の有無などは質問が来たら直ぐに答えられるようにざっと目を通しておくといいでしょう。
3. Intervention(Exposure) 介入
続いて、どのような治療の有効性を調べているのか、Interventionとして把握しておきましょう。ここは注意が必要で、同じ治療といっても自分が想定している物と論文が取り扱っている治療が同じ内容かどうか、しっかり把握しておく必要があります。実際に抄読会では細かい説明は省くことが多いですが、結構他の先生たちから質問が来ることが多いです。
例えば、狭心症で行われるカテーテル治療といっても、BMS(Bare Metal Stent)なのかDES(Drug Eluting Stent)なのかで意味が変わってしまいます。他にも結構細かい違い(時系列とか時間差とか、薬の微妙な違いとか)が登場する場所なので、ここは細かく把握しておきましょう。
なお、Intervention=介入がはいるのは介入研究であり、観察研究ではこの項目は次に出るComparisonと並べて、どういうグループ分け(例えば喫煙をするグループと、禁煙のグループという2群を分けているのか、もしくは癌患者であればstageで1,2,3,4と4群に分けているのか)をして観察しているのか把握すると考えてくれれば大丈夫です。
4. Comparison (比較)対照
ここはInterventionの対になるグループはどういうグループを用意したかという考えでOKです。例えば、Aという治療をしたInterventionに対して、Aという治療をしていないComarisonでも、Bという治療をしたComparisonでもどちらでも気にしないでください。
ここは論文紹介ではあまり重要視されないことが多いのですが、EBMを行う時には大事になります。細かい違いかもしれませんが、例えばAという治療法の有効性を考えているとしましょう。自分としてはAという治療を「する/しない」、でどういう違いがあるのか知りたい時に、読んでみた論文はAという治療をしたInterventionとBという治療をしたComparisonでは、得られる結果は「Aという治療をする/Bという治療をする」、でどういう違いがあるかがわかるだけで、本当に知りたい情報が得られないという事になりかねないからです。レポートを作成するときも主張と根拠がずれる可能性があるため、しっかり把握しておきましょう。
5. Outcome 結果
ここは言葉通りですね。注意すべきところとしては、Primary Outcomeをきちんと把握してほしいという事でしょうか。Second以降は附属的な情報なので、特に抄読会ではPrimaryを中心に説明してもいいのかなと思います。
MethodでPrimary Outcomeの定義を拾い、そしてFigureで実際の結果を確認するというのが簡単な手順でしょうか。まぁ、ここの問題は論文の読み方というよりは、統計の問題が出てくるので、そちらはまた改めて紹介できればと思います。
終わりに
いかがだったでしょうか。最近はPICOとか研修医でも知っている時代となり、ネット社会ってスゲーと思っているのですが、意外と実際の抄読会では利用されておらず、せっかくなのでこのブログでも紹介してみました。どこかで抄読会を気楽に乗り切るための方法なんかを紹介できればと思っています。
それでは皆様、have a nice day and see you next day!